ツイートの3行目

小学校の先生です。ツイートは2行まで。3行目からをここに書いていきます。

【木】食パンは主食用パン

 

 おはようございます。みなさんは「略語クイズ」をご存知ですか。子どもたちと一緒にやると盛り上がるので、知らなかった人はぜひやってみてください。たとえばこんな問題です。

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 どうですか。わかりますか。ちなみにこの問題の答えは「あけおめ」です。答えを聞いたら「なるほどね」と思った方も多いのではないでしょうか。

 要するに、略語になったときに省略される部分が問題になっています。「あけましておめでとう」は「あけおめ」と言われるので、省略された「まして/でとう」が問題になっています。「図工」の問題は「画作」になり、「キムタク」の問題は「ラヤ」になるというわけです。それでは、ルールを理解していただけたところでもう1問やってみましょう。

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 答えがわかった方はツイッターまで。今日はそんな「省略」のお話です。どうも、インクです。ちなみに「インク(INK)」は「International Nonprofit Kid」の略です。はい。ごめんなさい。

 

 食パンは主食用パン

  クイズ番組などでよく出題されているので、ご存知の方も多いかと思いますが「食パン」は「主食用パン」の略語です。だから「食パン以外のパンも食べるだろ!」というツッコミは的外れです。

  「教科書」なんかも有名ですね。学校の先生はよくご存知かと思いますが「教科書」は「教科用図書」の略語です。はい、では教科用図書の201ページを開いて。ん?なんだ?教科用図書を忘れたのか。じゃあ、隣の人に教科用図書を見せてもらいなさい。次からは忘れないように気をつけるんだぞ。教科用図書。

 他にも案外知られていない略語が生活の中にはたくさんあります。「カラオケ」や「ワリカン」、「ボールペン」、「演歌」などもすべて略語にあたります。元の名前を答えることができますか。ふだんは何も考えずにつかっているので、いざ略語だと言われると元がわからないものもたくさんありますよね。

 一応答えを発表しておくと、「カラオケ」は「空オーケストラ」の略、「ワリカン」は「割前勘定」の略、「ボールペン」は「ボールポイントペン」の略、「演歌」は「演説歌」の略です。ちなみに筆者は最近になって「ダントツ」が「断然トップ」の略であるということを知りました。

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 このように、ことばは省略されてつかわれます。名詞に限らず、ことばそのものが「省略」という特徴を持ち合わせています。たとえば、今ここで筆者の「生い立ち」や「好きな異性のタイプ」を語ることはありません。なぜなら、これまでの話の流れに合っておらず、今話す必要がないからです。すこし極端な例ではありますが、これもある意味「省略」です。

 

 ことばには「言わなくてもいいことは言わない」という特徴がある。

 

 このブログそのものだって一種の省略の上に成り立っています。2行目までをツイートし、3行目からをブログに書く。それがこのブログ「ツイートの3行目」です。要するに、ブログの省略がツイッターだということになります。

 また、本来ならば紙に書いてひとりずつ配らなければならないところを、今ではボタンをひとつクリックするだけで、みなさんにこの文章を読んでもらうことができます。テクノロジーの発達による「手間の省略」だと言うことができるでしょう。

 このように考えると、本当に現代の人々の生活は「省略」であふれています。あれも省略ですし、これも省略です。実はこの話、先日書いたこの記事の内容ととてもよく似ています。

taishiowawa.hatenablog.com

 「説明が丁寧すぎてゲームはチュートリアルで嫌になる」ということを書いています。要するに、省略可能な説明を長々としてしまっているせいで相手を飽きさせているという話です。

 一方で、説明が不足してしまうと、同じく上の記事に登場するコーヒーメーカーのようなことになりかねません。説明を省略しすぎると、それはそれでエラーを発生させてしまうのです。

 このように考えると「省略のバランス感覚」が大切だということがわかります。省略しすぎても伝わらないし、省略しなさすぎてもクドくて嫌がられます。

 

 どこまでを言って、どこまでを言わないのか。

 

 はじめに話していた「略語」は、なぜだか批判の対象になりがちです。「最近の若者はなんでもかんでも省略して、正しい日本語がつかえない」と大人たちが嘆きます。しかしこれ、ただのジェネレーションギャップです。

 「言わなくてもいいことは言わないように変化する」ということばの特徴を前提とするなら、省略されればされるほど優秀だということになります。なんのエラーもなく意思疎通がはかれるのなら、こどばは少ないに越したことがないのです。

 若者どうしでは省略可能だった文脈が、世代差によってエラーを起こしたという、ただそれだけの話です。ことばの特性が根本的に変化したわけでも、正しい日本語がどうのという話でもありません。単純に「省略」に対する認識のズレが発生しただけです。

 このズレは別に、同世代でも発生します。恋人どうしでも家族間でも、十分に起こり得ます。これらを限りなく少なくしていくのが、相互理解への歩みであり、コミュニケーション能力の向上でもあるのではないでしょうか。

 

 省略のすり合わせ。

 

 可能な限り短い時間で、相手がすでにもっている文脈を捉え、省略できることばをとことん省略する。このお互いの省略加減がドンピシャでハマれば、コミュニケーションは円滑に進むことでしょう。しかし、どちらかが省略しすぎたり、反対に省略しなさすぎたりしてしまうと、片方が相手に合わせるような形になってしまいます。

 話し上手・聞き上手と呼ばれる人たちは、この省略加減が本当に絶妙です。どこまでを省略してどこまでを省略しないのかという判断力がとても優れています。もうね、びっくりしますよ。瞬時に判断しますからね。

 全員にこの能力が備わっていれば、きっと争いはなくなり、世界は平和になるでしょう。ただ、残念ながらそういうわけにもいきません。当然ですが、この「省略感覚」は人によってちがいます。だからこそおもしろくもあるんですけどね。やはりバチっとハマったときのコミュニケーションのおもしろさには変えられません。

taishiowawa.hatenablog.com

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(以下略)