おはようございます。オセロが得意です。そうです。黒と白のアレです。正確に言うなら「オセロ」は登録商標なので「リバーシ」ですね。ルールはとても単純なのに、とんでもなく奥が深いボードゲームです。素人はなるべく多くひっくり返すことを最優先に考えますが、玄人はちがいます。玄人は「相手が置くことができる場所をいかに限定させられるか」ということを最優先に考えます。目前の利益に飛びつくのではなく、最終的なゲームコントロールを目指すのです。だから本当に強い人と戦うと、後半は自分の石を置くところがほとんどなくなります。まるで〇〇みたいですね。どうも、インクです。
「あなたのため」が一番こわい
「あなたのため」が一番こわい
— インク@小学校の先生 (@firesign_ink) 2018年11月13日
「あなたのため」と言ってくる人には注意が必要です。「あなたのため」の判断基準は、その人の経験でしかありません。もちろんその人の経験に絶大な信頼を抱いているのであれば、受け入れてもいいのかもしれません。しかし、大抵の「あなたのため」は、意見を通すためにつかわれる都合のいい言い回しでしかないのです。
うまくいったら「ほら、言ったとおりでしょ」
うまくいかなかったら「ほら、言ってあげたのに」
要するに、結果がどうなろうとも「あなたのため」と言った人がマウントをとることができる仕組みになっています。「あなたのため」と聞くと、まるで優しい人であるかのように思えてしまいますもんね。なんてタチの悪いことばなのでしょう。
また「あなたのために」とがんばると、どうしても相手にリアクションを求めるようになってしまいます。つまりは「あなたのためにこんなにがんばったのに、どうして応えてくれないの!」という状況に陥りやすいということです。
相手からすれば、そんなこと知ったこっちゃありません。いわゆる「頼んだおぼえはない!」というやつです。勝手にがんばって、勝手に期待されても困ってしまいます。サプライズのプレゼントに対するリアクションなんてまさにこれですね。
子どものためにこんなにがんばったのに。
クラスのためにこんなにがんばったのに。
そんな「あなたのため現象」が頻繁に起こるのが、学校の先生という職業です。あなたのために先生はこんなにがんばったのに、どうして一向にテストの点数が上がらないの。クラスのために先生はこんなにがんばったのに、どうして言うことを聞いてくれないの。
うまくいかないのならうまくいかない原因が何かしらあるはずなのに、それを追求することもなく相手に原因を求めようとします。それが「あなたのため現象」です。「自分はもうがんばったから、あとはあなたの問題だ」というわけです。どうですか。だんだんと「あなたのため」のこわさがわかってきましたか。
あなたのこんなところが嫌だから変えてほしい。子どもたちのトラブル対応をしているとよく耳にすることばです。これもまた、先ほどの「あなたのため」と同様に、うまくいかない原因を相手に求める言い回しです。
その裏には「自分はわるくない」「自分はがんばった」という思いが隠れています。自分はこんなにがんばったのに、相手が思うように動いてくれない。自分はこんなにがんばったのだから、相手が思うように動いてくれて当然だろう。
相手を変えることはできない。
自分を変えることはできる。
だからこそ、子どもたちのトラブル対応をするときには、必ずいつも「あなたはどうしたいの?」「あなたはどうするの?」ということを問い続けます。〇〇さんはこうしたいんだって。△△さんはこうしたいんだって。先生はここまで。あとはふたりで話してね。
ここでもし「あなたのこんなところが嫌だから変えてほしい」を受け入れてしまうとどうなるのかというと、どちらかを悪者にするしか道がなくなってしまいます。先生は悪者を叱って、ごめんねの儀式を執り行います。ごめんね。いいよ、もうしないでね。もうしないよ。そして先生から最後にひとこと。先生が怒るのもあなたのためなのよ。
こうして再び同じようなトラブルを起こします。なぜなら、変わらなかった人間がひとりいるからです。そうです。相手を変えることだけを考えて、自分は何も変わらなかった人間のことです。変わらなければ、当然同じようなことを起こします。そしてまたこう言うのです。あなたのこんなところが嫌だから変えてほしい。
結局はすべて自分次第です。自分がどのような手を打つのかによって、相手の手も変わります。本当に相手をひっくり返したいと思うのなら、自分の動きを考えるしかありません。このときに、相手を理由にしてはいけません。「あなたのため」は、ただの責任逃れです。うまくいかなかった。じゃあ、次はどうしよう。うまくいかなかった。どこをどう改善しよう。応えてくれない相手がわるいのではありません。変わろうとしない自分がわるいのです。