ツイートの3行目

小学校の先生です。ツイートは2行まで。3行目からをここに書いていきます。

【月】「爽やかな見た目」と「堅苦しいことば」には匿名性がある

 

 おはようございます。いつも0時ぴったりに来てくれてありがとう。あなたが来ると「ああ、また新しい1週間が始まるんだなあ」という気もちになります。正直なことを言うと、ほんのちょっとだけ「来なければいいのになあ」と思うときがあります。ごめんなさい。でも、あなたがこうして来てくれるおかげで、わたしは次の1週間へと進むことができるのだと思います。もしも、あなたが来てくれなかったら、きっと大きな不安にさいなまれてしまうことでしょう。あなたが来るから、わたしのやるべきことがはっきりします。あなたが来るから、また子どもたちと出会えます。今日ものこり18時間、よろしくね。きみがわたしの親友であることをうれしく思っています。きみの親友、インク。

 

「爽やかな見た目」と「堅苦しいことば」には匿名性がある

  毎日ブログを書くようになって、画像をよくさがすようになりました。記事のサムネイルになっているあれです。画像さがしって以外と難しいんですよね。記事の内容に合っていても、いまいちパッとしなかったり。色合いがとてもすてきなのだけれど、記事の内容とはかけ離れていたり。

 また、この世界には著作権という法律が存在しているので、万が一のことも考えて、なるべくフリー素材をさがすようにしています。フリー素材って、上から「sample」という文字が入っていたりしてけっこうややこしいんですよね。その文字をとるためにはいちいち会員登録が必要だったり。まあ、そんなこと一切考えずに思い切りアウトな画像をつかっている記事もあるんですけどね。

 そんな「画像さがし」をするようになって、ふと思ったのが「どうしてフリー素材ってあんなにフリー素材なんだろう」ということでした。ああ、フリー素材。どうしてあなたはフリー素材なの。言っていることは伝わっているでしょうか。まあ、画像の話ですからね。実際の画像をお見せするのが一番手っ取り早いでしょう。

 

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 どうですか、この圧倒的フリー素材感。だれがどう見てもフリー素材です。素人がなんの気なしにスマホで撮った写真ではありませんし、プロが作品として撮った写真でもありません。フリー素材としてつかわれるために撮られた、生粋のフリー素材です。生まれも育ちもフリー素材。フリー素材村から一歩たりとも出たことがありません。同じ村の仲間たちをもう少しご紹介しましょう。

 

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 いかがですか、フリー素材村のエリートたち。すばらしいフリー素材っぷりでしょう。1枚目の写真なんて、完全に MacBookiPad です。しかし、そんな固有性をまったく感じさせないのがフリー素材のすごいところです。ロゴはしっかりと消すあたりに、細やかな配慮が感じられます。

 2枚目の写真なんて、人の手が写っています。当たり前のことながら、この手はこの世に生きるだれかの手です。この手のもち主は今もこの世界のどこかで生きています。それにも関わらず、この画像は紛れもなくフリー素材です。この手からはそのもち主の固有性を一切感じとることができません。それがエリートフリー素材なのです。

 もちろんフリー素材の中には、人の顔が思い切り写っているものも存在します。でも冷静に考えると、人の顔が写っているのに「固有性が感じられない」なんてことがありえるのでしょうか。だって顔ですよ。顔。基本的に人は、相手の顔を見てその人のことを認識します。そんな顔が写っている画像が、フリー素材として匿名性をもつはずがありません。まさかそんなはずがないですもんね。あやうく騙されるところでした。

 

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 ...!!

 

 いやいや、待てよ。そんなはずがありません。だって人の顔が写っているんですよ。なんなら全身の半分以上が写っています。それなのに、こんなにフリー素材なはずがありません。だって、この人と街中ですれ違っても「あ、あの人だ!」とはなりませんよ。なんなら、きっと今日布団に入るころには忘れてしまっていると思います。一体どういうことなんだ...。念のために他の人の写真も見ておきましょう。

 

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 一体どういうことなんだ...。どうしてこの人たちは顔を思い切り公開しているのに、こんなにも匿名性を保っていられるんだ。どうしてこんなにもフリー素材なんだ。まさかこの人たちもまた、フリー素材になるために生まれてきたのか? いや、そんなはずはない。この人たちにだって、ひとりひとり山あり谷ありの人生があるはずだ。ここに切り取られているのは、そんな人生のほんの一瞬に過ぎないはず。それなのになぜ...。なぜこんなにフリー素材なんだ...。

 

 と、このようにフリー素材を見ていくと共通点がひとつだけあります。それは「爽やか」だということです。もちろん、ちゃんとさがせば「爽やか」ではないフリー素材もあるとは思うんですけどね。きっと、この「爽やか」という特徴について、そこまでの反論はないかと思います。フリー素材は基本「爽やか」なのです。言い換えると、「爽やか」であればフリー素材になれるということでもあります。要するに、匿名性を獲得するということです。

 考えてみてください。新卒の学生の見た目に求められる要素ってなんでしょう。面接で大切な要素ってなんでしょう。そうです。「爽やか」であることです。それはつまり、匿名性が求められているということです。さらにもう一歩進むと、文句を言わずに働く人間なら誰でもいいということでもあります。人材に個性などいらないのです。前衛的な芸術写真も、生活に密着したスマホ写真もいりません。企業がほしいのはフリー素材なのです。

 そんなことを思いながら今一度、フリー素材を確認してみてください。なんだかだんだん怖くなってきませんか。匿名性を獲得したこの人たちは一体何を思っているのでしょう。失われた固有性は一体どこへいってしまったのでしょう。これらの写真はいつまでもこのままフリー素材なのでしょうか。もしかすると、次に見たときには、爽やかな笑顔が消えているかもしれません。

 

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 本当は「堅苦しいことば」についても書きたかったのですが、「爽やかな見た目」で随分と文字数を食ってしまいました。「堅苦しいことば」は、丁寧になればなるほど匿名性を増していきます。時候の挨拶や役所の文章などがまさにそれですね。

 このように、まちがいなくそこには個人がいるはずなのに匿名性を孕むものが、この世には存在します。矛盾する概念のように見えて、そこには確実に両方の要素が含まれています。個人がいるのに匿名性をもっている。

 今回は「爽やか」という共通点しか見出せませんでしたが、きっとこの現象には何かが隠されているはずです。人はどうすれば固有性を失うのか。どうすれば匿名性を獲得するのか。謎は深まるばかりです。