ツイートの3行目

小学校の先生です。ツイートは2行まで。3行目からをここに書いていきます。

【火】同じ毎日を続けるべきではない

 

 おはようございます。ひと駅はなれたところにミスタードナツがあります。月に1度、なんとなく食べたくなる日がやってきます。決して、どうしても食べたくなるわけではありません。なんとなく食べたくなるのです。そんな日には、歩きます。まだまだ若いので、ひと駅くらいなら歩きます。そして、窓ぎわの席につき、ドーナツをかじります。ひとつはオールドファッション。もうひとつはフランクパイ。そしておかわりが自由なホットカフェオレ。これがいつものセットです。一昨日の日曜日は、月に1度やってくる「なんとなくドーナツが食べたくなる日」でした。どうも、インクです。

 

同じ毎日を続けるべきではない

 いつものように隣駅まで歩きました。まだまだ若いので、ひと駅くらいなら歩きます。2月とは思えないようなあたたかさで、マフラーを巻いている人はだれひとりとしていませんでした。線路ぞいを歩くので、基本的には一本道です。ひとつ目の信号は止まることなく通過することができたのですが、のこりのふたつの信号にはひっかかってしました。ミスタードーナツに行くときはいつもそうです。1勝2敗。

 お店につくと、まずは席を確保します。いつもの席があいていることは、店の前を通過する時点ですでに確認済みです。まあ、いつもの席と言っても月に一度すわるだけなんですけどね。カバンの中から本をとり出し、自分の分身としてその席に置きました。

 あとはトレーとトングをとって、ドーナツの前を横歩きするだけです。ひとつはオールドファッション。もうひとつはフレンチクルーラー

 

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「次の方こちらへどうぞ。店内ご利用ですか」

「はい。これとカフェオレをひとつ」

「かしこまりました。ホットでよろしいですか」

「はい」

「お会計847円になります」

「iDで」

「iDですね。タッチお願いします」

「はい」

「レシートになります。ごゆっくりお過ごしください」

 

 こうしてトレーの上には、オールドファッションがひとつ、フレンチクルーラーがひとつ、そしてカフェオレのマグカップがふたつのりました。

 あれ。もういちど。オールドファッションがひとつ、フレンチクルーラーがひとつ、そしてカフェオレのマグカップがふたつ。マグカップがふたつ。ひとりしかいないのにマグカップがふたつ。

 すっとぼけていますが、実を言うと、レジでお金を払っているときにはすでに気がついていました。自分のトレーにマグカップがふたつ。ひとりしかいないのにマグカップがふたつ。頭の中には、こんな可能性が思い浮かびました。もしかすると、おかわりが自由だから、そのおかわりをあらかじめ用意してくれているのかもしれない。

 いや、そんなはずはありません。いつもなら、店員さんが「おかわりいかがですか」と言いながら店内を巡回してくれています。そんな手間を省くために、はじめからふたつわたしておこうだなんて横着なまねをするはずがありません。ましてやミスタードーナツです。大手チェーンがそんなことをするはずがありません。

 というようなことを考えながら、ふたつのカフェオレがのったトレーを窓ぎわの席まで運んでいました。ふたつのマグカップをのぞきこむと、どちらのマグカップにもまったく同じ量のカフェオレが入っています。本当にまったく同じです。誰がどう見ても同じです。さすがは大手チェーンです。

 そこで、さきほど受け取ったレシートのことを思い出しました。レシートになります。ごゆっくりお過ごしください。そう言われて受け取ったレシートにはこう書かれていました。

 

カフェオレ 2点 ¥616

 

 なるほど。だからちょっと高かったのか。ふり返って見ると、今ならレジは空いています。もしも自分が「カフェオレをふたつ」と言い間違えていたとしたらどうしよう。別にこのままでもいいかな。そんな考えが一瞬あたまをよぎりました。でも、店員さんが「おかわりいかがですか」と巡回してきたときに、マグカップがふたつ置いてあったらどう思うのだろう。「なんでこの人ひとりでふたつも飲んでいるんだろう。おかわり自由なのになあ」と、そう思うに違いありません。もしこのまま言いに行かなければ、店員さんにそう思われる未来が確定してしまいます。

 

「あの、カフェオレひとつ多いんですけど」

 

 きっと、のこりの人生でこのセリフを言う機会はもう二度とこないでしょう。あの、カフェオレひとつ多いんですけど。そう伝えると、店員さんは顔色ひとつ変えずに「失礼いたしました。少々お待ちください」と言い、308円を返金してくれました。これにて一件落着です。

 トレーの上には、オールドファッションがひとつ、フレンチクルーラーがひとつ、そしてカフェオレのマグカップがひとつ。これで完璧です。いつもの席で、いつものようにドーナツをかじり、いつものように本を読む。これが、月に一度やってくるいつもの「なんとなくドーナツが食べたくなる日」なのです。

 

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 来たときとと同じ道を通り、家につくころにはもうあたりは真っ暗でした。夜になると多少気温は下がりますが、相変わらずマフラーを巻いている人はだれひとりとしていませんでした。きっとだれも今日が2月だなんて思っていないのでしょう。

 

家に帰るとずっとさがしていたものがみつかりました。

 

 きっと、フランクパイのかわりにフレンチクルーラーをとっていなければ、店員さんはカフェオレをふたつ置いてくれてはいなかったでしょう。きっと、店員さんがカフェオレをふたつ置いてくれていなけでば、さがしものはみつかっていなかったでしょう。

 どこかの歯車を変えれば、また別の歯車と噛み合い、これまで動かなかった部分が動きはじめることになります。フランクパイでは、ひとつのカフェオレでは、絶対に動かなかった場所が動き始めたのです。

 

カフェオレふたつでさがしものがみつかる

 

 ほうっておけば、歯車は古くなりだんだんと軋んでいきます。歯車が軋んだままでは、みつかるものもみつかりません。現状を変えたいのならば、関係がなくてもいいから、身近なところを変えてみよう。そうすればものごとが少しずつ動き出し、さがしものがみつかるだろう。先人たちのこのような知恵が、このことわざには込められているのです。