【月】否定し尽くした先にある肯定を
おはようございます。『ボクらの時代』を観てから、西加奈子さんのトークの音源を探して聴くようになりました。オードリーのオールナイトニッポンにゲストで出演している回があるのですが、まあおもしろかったです。エネルギーがすごいんですよね。
その回の中で中学時代のお話をすこしだけされていたのですが、簡単にご紹介しようと思います。当時の西さんは勉強が苦手だった男の子に数学の問題を教えてほしいと頼まれました。その問題は三角形の内角を求める問題で「180度からふたつの角の和を引けばのこりの角度も求められる」というものでした。
簡単なはずなのに、どうしてもわかってもらえなかったので、その子の言い分を聞いてみました。すると「なんで180度なん?」と言われたそうです。
そのことばを聞いて、何度説明をしても伝わらなかった原因を知りました。それと同時に、自分自身はそこに疑問すら抱いていなかったということに気がつき、ハッとさせられたとおっしゃっていました。
この話を聴いて、呂布カルマさんの「俺の勝手」という曲を思い出しました。サビのリリックが「バケツ持たされて廊下に立ってたあいつはきっとわかってた。俺は何も考えず椅子に座ってた。真っ黒な黒板に向かってた」なんですよね。ドンピシャです。
三角形の内角の和が180度であることに疑問を抱いた男の子は一体どんな大人になったのでしょう。バケツ持たされて廊下に立っていたあいつは一体どんな大人になったのでしょう。どうも、インクです。
否定し尽くした先にある肯定を
否定し尽くした先にある肯定を
— インク@青年求職家 (@firesign_ink) 2020年10月31日
昔から、ものごとを肯定的に捉えたキラキラしたことばが苦手でした。わざとらしくて、嘘っぽくて、胡散臭くて。目の前に広がっている世界とあまりにも違いすぎて、嫌気がさしていたのだと思います。
もしかすると「きれいごと」ということばがいちばん近いのかもしれません。「何も見えていないからそんなことが言えるんだ」とすら思っていました。
たしかに否定を否定しただけの、薄っぺらい肯定も山のように存在します。どこで誰から聞いたのかは知りませんが、まるで自分のことばであるかのように他者のことばをつかっている人もよく見かけます。
しかしそんな肯定の中にも、ほんの少しだけ「否定の先に見出した肯定」が混ざっています。否定して、否定して、否定して。その先でようやく見ることのできた肯定が、確実に混ざっているのです。
昔と比べて情報の共有が簡単になったので、見てくれだけをマネしようと思ったら、わりと簡単にマネすることのできる時代になりました。海賊版やブートレグの数も増えたため、それらしく整えるだけならコストもほとんどかかりません。
こうして偽物が増加することで、本物を見つけ出すことが難しくなってしまいました。近くで見れば一目瞭然なんですけどね。あまりにも偽物の数が増えすぎて、単純に視界が遮られるようになったのです。
たとえば、近ごろ人気を博している星野源さんなんかはとてもわかりやすい例ですよね。2019年に発表した「私」という曲の中に「あの人を殺すよりおもしろいことをしよう」という歌詞があります。
源さんが好きな方はよくご存知かと思いますが、2011年にリリースされた「バイト」という曲の中には、対照的とも言える歌詞があります。それは「殺してやりたい人はいるけれど君だって同じだろ。嘘つくなよ」というものです。字面だけを見ると怖いですね。ぜひ2曲とも聴いてみてください。
今でこそ「恋」だの「SUN」だの「ドラえもん」だのと、明るい曲をたくさんつくっていますが、彼こそまさに否定の先に肯定を見出した人なのだろうなと思うわけです。だからこそイケメンでも何でもないのに、あんなにカッコいいのです。
PUNPEE さんと一緒につくっていた「さらしもの」を聴いたときには「ついに本当にやりたいことをやりはじめたな」とう印象でした。今の彼がやるからこそ価値があるのだろうなと思うわけです。
ミドル世代にあたる芸人さんたちの中でも、おなじようなムーブメントが起こりつつあるような気がしています。妬み嫉みで満たされた若手時代を送ってきた芸人さんたちが、否定の先にある肯定を見出しはじめているような気がするのです。
それこそ冒頭でちらっと述べたオードリーの若林さんなんかも、わかりやすい例ですよね。否定の先に肯定を見出したからこそ、いま存分に輝きを放っています。否定の大きさだけを見るなら、南海キャンディーズの山里さんなんかまさにですよね。何様だよという話ですが、確実におもしろさが増しています。
結局は、いかにはやい段階で、否定の先に肯定を見出すことができるかどうかです。はやく見出すためには、否定して、否定して、徹底的に否定し尽くさなければなりません。実はここにも覚悟がいります。
否定って孤独ですからね。最悪の場合は死に至ります。冗談ではありません。本当です。だからこそ、多くの人は否定し尽くす前に引き返し、偽物の肯定で満足しながら生きていく道を選ぶのです。
いま否定するしかない状況に置かれている人は、その調子で否定し続ければよいと思います。否定して、否定して、しっかりと生き延びてください。その先にはきっとおもしろい世界が広がっているはずです。
【今後の予定】
①11月4日(水)こきけんよう Vol.17
②11月6日(金)らぱいんざWORLD Vol.8
【リスナー募集】
①11月4日(水)こきけんよう Vol.17
毎週水曜日の定例会です。次回は21時スタートです。どうでもいい話をしています。週の真ん中、折り返し地点として聴きに来てはみませんか。声を出せる人はぜひとも一緒にお話ししましょう。水曜日に予定があるというだけで、目安になっていいものですよ。参加希望はツイッターのDMまで、よろしくお願いいたします。
②11月6日(金)らぱいんざWORLD Vol.8
らいざさん、らぱんさんと共に行っている「らぱいんざWORLD」も気がつけば8回目になりました。今回は前回ゲストの mucchu さんのご紹介で くま吉さん が来てくださいます。いつものごとく、何の情報もありません。年齢も性別も所在地もわかりません。もしかしたら人間ですらない可能性だってあります。
そんな方をゲストに呼んで、いつもどおり何の役にも立たない話をします。説明をしようにもこれ以上に説明することがありません。ぜひ、遊びに来てね! リスナーとしての参加希望はツイッターのDMまで、よろしくお願いします。
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