【金】アウトプットすればインプットしたものが失くなるわけではない
おはようございます。数年前に詩を読みあさっている時期がありました。図書館の本棚にある詩集を誰彼かまわず片っ端から読みました。谷川俊太郎、茨木のり子、まど・みちお、中原中也、川崎洋、荻原朔太郎、吉野弘、寺山修司、宮沢賢治 ......。
今ではその中身なんてまったく覚えていませんが、詩のもつ「一人称の強さ」がとてもおもしろかった記憶があります。詩の主語は常に一人称ですからね。何かになりきって書かれた詩でも、限りなく抽象的な詩でも、結局主語は一人称なのです。
そんな中でもとくにお気に入りだったのが黒田三郎という詩人でした。教科書に「紙風船」という詩が載っていたのでご存知の方も多いかもしれません。この詩はあまり好みではないんですけどね。
最後の「美しい願いごとのように」がどうしても蛇足に思えてしまうのです。野暮だとは思いませんか。「いや、そうてはなくてだね」という意見があればぜひ教えてください。どうも、インクです。
アウトプットすればインプットしたものが失くなるわけではない
アウトプットすればインプットしたものが失くなるわけではない
— インク@青年求職家 (@firesign_ink) 2020年8月29日
数年前から「インプット」や「アウトプット」ということばをよく耳にするようになりました。ITのインフラが整備され、自己啓発を含んだビジネス書に注目が集まるようになったころのことでしょう。
もちろんこれらのことばが広まることでよいこともありましたが、それと同時にあまりよくないこともありました。それは「意味をもつ範囲が小さく区切られてしまった」ということです。
「インプット」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。本を読むことでしょうか。動画を観るでしょうか。音声を聞くことでしょうか。人から直接話を聞く講演会やセミナーに参加することでしょうか。
たしかにこれらはすべて「インプット」と呼ぶことができるでしょう。しかし、それ以外にもインプットをする場面はいくらでもあります。 今日の天気を判断することもインプットですし、信号の色を見て進むか止まるかを決めるのもインプットです。朝のあいさつひとつとっても、同じ電車に乗っている人の服装ひとつとっても、生活のすべてがインプットなのです。
ところが「インプット」ということばが普及することで、範囲が限定されてしまい、上記のような行為は無意識のうちに「インプットではないもの」という扱いになってしまいました。大袈裟に言えば「学びがないこと」という捉え方をされてしまったのです。
天気ひとつをとっても、考えることはいくらでもあります。「爽やかな雨とじめっとした雨があるのはどうしてだろう」とか「人のメンタルに天気はどのような影響を及ぼすのだろう」とか。「天気予報が外れるときはどんなときなのだろう」とか「いい加減に傘は進化しないのかな」とか。
信号においても同様です。「どうして緑なのに青信号なのだろう」とか「普及しすぎたから変えられないだけで、もっと効率的に交通整理をする方法があるんじゃないか」とか。「信号待ちのせいで人生を棒に振った人もいるんだろうな」とか「何秒までなら人は待てるのだろうか」とか。
考えることはいくらでもあるわけです。本を読まなくても、動画を観なくても、音声を聞かなくても、講演会やセミナーに参加しなくても、インプットをする機会はいくらでもあります。結局は、自分が考えているか考えていないか。ただそれだけの話なのです。
もちろん「アウトプット」だって同じです。足を踏み出して歩くこともアウトプットですし、電車の時間を逆算して家を出発することもアウトプットです。他者と衝突しないようにあえて引き下がることもアウトプットですし、お茶お飲むこともアウトプットです。
いや、お茶を飲むことはインプットか? まあいずれにせよ、こちらも同様に考えることはいくらでもあるわけで、結局は自分が考えているか考えていないか、それだけの話なのです。
よく「アウトプットするためには、その分インプットしなければならない」と言いますが、生活そのものがインンプットとアウトプットで成り立っているわけですから「一方のためのもう一方」という関係性にはならないような気がしています。いちどアウトプットすればインプットしたものが失くなるわけではありませんからね。
目の前の考える機会をすべて逃しているくせに「本を読んでインプットした!」とか「ノートにまとめてアウトプットした!」とか言っているのはどうなのだろうという話です。まさに新しいことばが普及することによって、意味合いが限定されてしまうことによる弊害であるような気がします。
別に悪いことではないんですけどね。別に悪いことではないんですけど、ことばに合わせて視野までせまくなってしまうのは、滑稽な話だと思うわけです。
【今後の予定】
①9月11日(金)らぱいんざWORLD with らいざさん、らぱんさん、へいなかさん
②9月16日(水)こきけんよう Vol.11
③9月25日(金)らぱいんざWORLD with らいざさん、らぱんさん、mucchuさん
【リスナー募集】
①9月11日(金)らぱいんざWORLD :本日
普段のらぱいんざWORLDは、テレホンショッキング形式でゲストに来ていただいているのですが、今回からゲストを公募する形式のらぱいんざWORLDをはじめます。今後は、テレホンショッキング形式とこの公募形式を交互に行なっていく予定です。
そして、直近の第5回らぱいんざWORLDに来てくださるのが へいなかさん(@Heino_naka)という方です。法務教官として少年院でお仕事をされているということ以外はほとんど何も知りません。まあ、いつものことですね。
おもしろくなることは間違いないと思いますので、ぜひ遊びに来てください。ZOOMにて行います。聞き手としての参加を希望される方はツイッターのDMまでご一報ください。