おはようございます。毎日電車に乗っていると「よくもまあこれだけの人が思い思いに動いて社会は成立しているな」と思うことがあります。
おなじ箱に揺られていても行く先はひとりひとりちがうわけですからね。しかも、動いているのは自分が乗っている1箱だけではありません。世界でははいくつもの箱が同時に動いているのです。
そんなことを考えていると、途中の駅でふらっと降りてしまいたくなります。よくもまあ、誰も降りることなく時間どおりに目的地にたどりつけますよね。毎日の通勤や通学って、それだけですごいことだよなあと思います。どうも、インクです。
基礎だけを見せられていくら大切だと言われてもわかるわけがない
基礎だけを見せられていくら大切だと言われてもわかるわけがない
— インク@小学校の先生 (@firesign_ink) 2020年5月19日
伊坂幸太郎さんの『陽気なギャングが地球を回す』という本に、次のような数学のパラドックスが登場します。数学の世界ではかなり有名なパラドックスなのではないでしょうか。
① a = b とする。
② 両辺に a をかける。
③ 両辺に a2-2ab を足す。
④ 両辺を整理する。
⑤ 左辺を共通因数2でくくる。
⑥ 両辺をで (a2-ab) わる。
この手順で計算を進めていくと「2=1」という、あってはならない等式ができあがってしまいます。数学の世界で、このようなパラドックスが許されるはずがありません。両辺におなじ計算をしても左辺と右辺は等しいままのはずですからね。一体どうしてこのような等式が生まれてしまうのでしょう。
この問いにははっきりとしたポイントがあります。もうすこし考えたい方は、ここでいったん手を止めてください。「こんな有名なパラドックスくらい知っているよ」という方や「こんなもの一瞬でわかったよ」という方はどうぞ先へとお進みください。
それでは正解発表といきましょう。このような等式が生まれる原因は ⑥ の計算にあります。両辺を同じ a2-ab でわっているので問題がないように見えますが、この計算にこそ罠が仕掛けられています。実はこの a2-ab を計算すると 0 になってしまうのです。
① の時点で a = b という前提がありますからね。a2-ab は a2-a2 であり、それはつまり 0 なのです。みなさんも小学生のころに学習したはずです。どんな数も0でわることはできません。逆に言えば、0 でわってはいけない理由が、この一連の計算だというわけです。
「ゼロで割ると世界はおかしくなっちゃうんだよね」
伊坂幸太郎(2006)『陽気なギャングが地球を回す』祥伝社、P.31
ゼロでわると世界がおかしくなってしまうのです。だからゼロでわってはいけないことになっています。ちなみに、このきまりを学習するのは小学3年生の算数です。当然ですが8歳や9歳の子どもが、この理屈を理解できるはずがありません。
だから「そういう決まりなんだ」と教えられるわけです。こればかりはどうしようもないのかもしれません。高校生になったときに、はじめて「そうだったのか!」と気づくのもまた、学習のおもしろさなのかもしれません。
ただ「子どもにはまだ難しいから仕方がない」と言えるのは、自分が大人だからです。筆者自身は、子どものころに「ゼロでわることはできない」と教えられて、ずっと「どうしてなんだ?」と思っていました。大人に聞いても「そういうきまりだから」と言うだけで、ずっともやもやしたままでした。
そのほかにも「分数のわり算」なんて小学生が疑問を抱く定番中の定番ですよね。「どうして逆数をかけると答えが求められるの?」とか「そもそも分数でわるってどういうこと?」とか。具体から抽象へとうつり変わる途中段階だからこそ、いろいろと疑問が生まれてくるわけです。
学習において、この疑問ってとても大切だと思うんですよね。「自分の中で構築してきたこれまでのルールが通用しないものと出会った」ということですからね。未知との出会いは、必ず子どもにとっての刺激になります。
あとはそのような疑問を、大人がどのように受け止めるかです。「決まりだから」と言って切り捨ててしまうのか。「高校生になったらわかる」と諭すのか。はたまた、わからなくても何とかして説明しようと頑張るのか。
直近でいうと、QuizKnock のみなさんが、分数のわり算について説明した動画を上げていたので、興味のある方はぜひご覧ください。
最後にもうひとつだけ数学のパラドックスをご紹介して、今日の記事は終わりにしようと思います。これまた有名な循環小数のパラドックスです。
① 1/3 を少数に変換する。
② 両辺を3倍する。
定番中の定番ですね。1 = 0.999... 。小学生に質問されたら、みなさんならなんと答えますか。
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2020.6.26.21:00
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