ツイートの3行目

小学校の先生です。ツイートは2行まで。3行目からをここに書いていきます。

【木】「質問=分からないことを尋ねる」ではない

 

 おはようございます。先日美容院に髪を切りに行ったのですが、隣の席で「米津玄師」が話題になっていました。美容師「米津玄師って最近急に売れましたよね?それまで何をしていたんでしょうね?」→ 客「米津玄師はもともとはハチという名前でボカロ曲を作っていて、当時から人気だったんですよ!」といういつものやつです。一体この世界では、何度同じ話が繰り返されているのでしょうか。

 しかし、こうして「誰かに話したくなるネタ」をもっているということは大きな強みです。みなさんも「最近おもしろいブログをみつけたんだけど」と誰かに話してくれてもいいんですよ。米津玄師は自分からそんなこと言わないか。どうも、インクです。

 

「質問=分からないことを尋ねる」ではない

 「質問 意味」とグーグルで検索してみると次のように表示されます。

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 「問いただす」と聞くと、少し語気が強い気もしますが、基本的にはみなさんが思っていた通りの結果なのではないでしょうか。分からないことを尋ねる、それが質問です。しかし、実際のコミュニケーションを考えてみると、質問の役割は「分からないことを尋ねる」だけではないような気がします。むしろ、それ以外の意味合いの方がコミュニケーションにおける役割としては大きいのではないでしょうか。今日はこの「質問」について考えていきたいと思います。

 たとえば、まさについ数秒前に読んだ「基本的にはみなさんが思っていた通りの結果なのではないでしょうか」もひとつの質問です。後ろに「?」がつく疑問文です。しかし、もうお分かりかと思いますが、この質問を通して分からないことを尋ねているわけではありません。むしろ、分かっていることをあえて質問しています。野暮ですが、この質問の裏側には「基本的にはみなさんが思っていた通りの結果でしたよね。それを前提に話を進めますよ」という真意が込められているのです。

 同じ段落にある「それ以外の意味合いの方がコミュニケーションにおける役割としては大きいのではないでしょうか」もひとつの質問です。 この質問も同様に、分からないことを尋ねているわけではありません。この質問の真意は「それ以外の意味合いの方がコミュニケーションにおける役割としては大きいと思うのです。今からそれについて書いていくからみんなも一緒に考えてね」です。この時点で読者の皆様が、どのように考えているかはあまり関係がないのです。

 以上のふたつの「質問」に共通することは

 

1.相手に回答を求めていないこと

2.話を前に進める役割を果たしていること

 

です。しかし、このふたつの条件をそろえたいのであれば、何も「質問」という形をとらなくてもいいとは思いませんか。相手に回答を求めないのであれば、わざわざ質問せずとも、自分ひとりで話をすればいいではありませんか。

 それでもあえて「質問」という形を選ぶ一番の理由は、ひとりで話すのは不安だからだと思います。本来なら「相手を惹き付けるため」だとか「伝わりやすくするためのテクニックだ」とか、かっこいいことを言いたいところなのですが、やはりひとりで話すのは寂しいんですよ。逐一、相手に「ちゃんと聞いてくれているよね?」「分かってくれているよね?」と確認したくなってしまうのです。それによって、読者と足並みを揃えて、安心しながら話を進めることができるのです。

 

 ここまでは「話し手」の視点から「質問」について考えてきましたが、一般的に質問は「聞き手」が行うものだと言えるでしょう。特殊な例を先にとりあげてしまったのかもしれません。ここからは「聞き手」の視点から「質問」について考えていきたいと思います。

 聞き手による質問は、もちろん単純に分からないことを尋ねるという場合も多いのですが、それらも含めて一種の「相槌」としての役割を果たします。先ほど述べた「2.話を前に進める役割」ですね。

 以前の記事にも少し書きましたが、キングコングの西野さんが「ダウンタウンなう」という番組に出演したときに、坂上忍さんが西野さんにいろいろな質問をしていました。坂上さんは徹底して「クラウドファンディングのことをよく知らない」という立場をとっており、「クラウドファンディングって何?怪しくないの?」と相槌を入れていたのです。もちろん西野さんひとりでもクラウドファンディングについて語れたと思うのですが、坂上さんの質問が入ることで、「質問に答える」という必然性が生まれ、より説明がしやすい状況ができていたのです。

 つまり、聞き手の質問には、「相手が話す必然性をつくる」という役割がそなわっています。講義やパネルディスカッションの最後に行われる質疑応答の時間で、質問が上手な人は、ことごとくこの役割をよく理解しています。ただ、自分が知りたいから質問するのではなく、登壇者により深い話をさせるために質問するのです。良質な質問は、良質な話を生み出します。ある意味、質問は「話題提供」だとも言えるのかもしれません。

 

 

 そのように考えていくと、もしかすると「米津玄師って最近急に売れましたよね?それまで何をしていたんでしょうね?」という質問もひとつの話題提供だったのかもしれません。この美容師さんは、はじめから「米津玄師はもともとはハチという名前でボカロ曲を作っていて、当時から人気だった」ということは知っていたけれど、お客様に気持ちよく語ってもらうためにあえて知らないフリをしたのかもしれません。お客さんとのコミュニケーションもひとつの仕事だと言える美容師ともなれば、十分にあり得る話です。

 このお客さんからしたら「まんまと気持ちよく話をさせられた」ことになります。それに気がついてしまったら、もしかすると不快な思いをするかもしれませんが、本人がタネを明かさない限りその真意が表に出ることはありません。かなり高等なテクニックのように聞こえますが、コミュニケーションが本当に上手な人はきっと当たり前のようにこの技をつかっていると思います。

 

 ところで「よねづげんし」って不思議な名前ですよね。どうしてこんな名前にしたのでしょうね。