ツイートの3行目

小学校の先生です。ツイートは2行まで。3行目からをここに書いていきます。

【木】ここへ来るまでの経緯なんて教えてどうする

 

 おはようございます。こんな受け取り方をする人もいると思うよ。あなたが損をしないように言っているんだよ。まあ、あなたがいいと言うのならべつにいいんだけどね。

 よく耳にしますよね。この3コンボ。「ほかの人はこんなふうに思うかもしれないよ」と「ほかの人」に責任を預け、「あたたのためだよ」と「あなた」に責任を預け、意見を述べている当の本人は一切責任を負わなくても済むという仕組みになっています。

 こんな言い方をする人に限って、結局は自分が言いたいだけなんですよね。本当にズルいなあと思います。言いたいことがあるのなら、自分のことばで言えるようになりたいものですね。どうも、インクです。

 

 ここへ来るまでの経緯なんて教えてどうする

 本を選ぶときに、どうしても避けてしまうのが「著者の半生を描いた本」です。「過酷な過去を乗り越えたからこそ今の成功があるんだ!」みたいな本です。本屋さんに行けば、たくさんみつかることでしょう。

 その人自身にすでに興味があるのなら、読んでみたいと思うのかもしれません。しかし、大抵の著者は、ただの知らないおじさんかおばさんです。そんな人の半生なんて知ったこっちゃありません。生活環境がどうとか、人間関係がどうとか。そりゃあいろいろありますよ。人生だもの。

 きっとそんな半生の語りは、伝えたいことを伝えるための材料なのでしょう。伝えたいことを伝えるためにはバックボーンを語る必要があったのでしょう。著者もそのつもりで書いているはずです。

 しかし、大抵のバックボーン語りは、熱が入り過ぎていて本来伝えたかったことを逆に霞めてしまっている場合が多いのです。

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 「経験を語る」というのは、実はけっこうおそろしいことでもあります。なぜなら、だれも何も言えないからです。人の経験については、だれも何も言うことができないのです。だって、その人だけのものなんだもの。他者が入っていく余地がまったくと言ってもいいほどありません。

 つまり、聞き手はただただ聞くしかないのです。興味がないにも関わらず、うんうんと頷くしかないというわけです。そんな思いもつゆ知らず、聞いてくれることが嬉しくなって、話し手は次から次へと話します。その内容が過酷であればあるほど、聞いてもらいたくなってしまうのです。

 歳上から歳下への経験自慢なんて、もう救いようがありません。歳上に経験を語られたらもうどうしようもありませんからね。ただでさえどうしようもないのに、さらにどうしようもなくなります。どうしようもなさすぎて、どうしようもなくなってしまうのです。

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 結局のところいちばん大切なのは「経験からなにを得て、どんな魅力をもった人間になったのか」ということなのではないでしょうか。経験そのものなんて、べつになんだっていいのです。

 おなじ経験をしたからといって、おなじものを得られるわけではありません。経験年数が長いからといって、相手より優れているわけでもありません。経験は他者に対してどうこうするものではなく、自分の中で大切にしまっておくものなのです。

 仮に他者に経験を語るのなら、順番としては今の自分に興味をもってもらうことが先でしょう。あんなにおもしろい人が、これまでにどんな人生を送ってきたのだろう。こう思ってもらえて、はじめて経験を語ることに価値が生まれてくるのです。

 偉人と呼ばれる人たちの自伝なんてまさにこの形ですよね。なにかを成し遂げて、多くの人に興味をもってもらったからこそ、はじめて経験の語りが成立するというわけです。

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 経験を語る人の多くは、希少性に自信をもっています。家族に関わるシビアなものから、海外留学などのグローバルなものまで、さまざまな種類の経験を武器にしています。たしかに、希少性のある経験というものは、それだけでコンテンツとしての価値を生むのかもしれません。キャラクター付けやブランディングには便利なのかもしれません。

 ただし、結局はそれらもただの見せかけです。相手が何も言えないのをいいことに、マウントをとっているのと変わりありません。なんなら経験なんてひとりひとり違うわけですから、希少性どころか、全員が唯一無二です。まったくおなじ経験をしている人間なんてたったのひとりもいないのです。

 なんどもおなじことを言って申し訳ないのですが、結局は経験そのものではなく、経験から派生した人としての深みに価値があるというわけです。

 どれだけ悲惨な過去を乗り越えていようが、どれだけ広い世界を見ていようが、今のあなたが輝いていなければなんの意味もありません。はじめて会った相手に、ここへ来るまでの経緯なんて教えてどうするというのでしょう。過去の経験を語るのではなく、今の自分を語れるようになれたらいいなと思います。

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