ツイートの3行目

小学校の先生です。ツイートは2行まで。3行目からをここに書いていきます。

【月】「他人を傷つけたら怒るよ」と子どもに話しても仕方がない気がする

 

 おはようございます。教育業界では、新しいクラスで過ごすはじめの3日間を「ゴールデン・スリー・デイズ 〜 黄金の3日間 〜 」と呼ぶことがあります。1年間の学級経営において、はじめの3日間がかなり重要ですよという話です。特に1日目は初対面の場です。どんな子どもたちなのだろう。どんな反応を返してくれるのだろう。どんな先生なのだろう。どこまで許してくれるのだろう。お互いにそんな腹の探り合いをはじめるわけです。

 昨日の記事にも書いた通り、今年度は異例のスタートになりそうです。今日は、いつどんな形でスタートすることになったとしても対応できるように「学級開き」について書いておこうと思います。先生ではない方も、子どものころを振り返って、新年度の初日に先生がどのような話をしていたかを思い出しながら読んでみてください。どうも、インクです。

 

「他人を傷つけたら怒るよ」と子どもに話しても仕方がない気がする

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 初任者へ向けた指南書のようなものをまったく読んできませんでした。だから最近のトレンドはわかりませんが、上記の3つを初日に話すべきだという説が一般的なのではないでしょうか。先輩の先生から「この3つを話したらいいよ」と教えられた方も多いのではないかと思います。ひとつずつ考えていきましょう。

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1.自己紹介

 はじめまして。インクといいます。今日、みなさんと会えることをとても楽しみにしていました。先生は、休み時間に外で遊ぶことが大好きです。勉強も遊びも全力で、みんなと一緒に楽しく過ごせたらいいなと思っています。すてきな1年にしましょう。よろしくお願いします。

 最近よく思うようになったのですが、自己紹介って必要ですか? 担任発表のときに、すでに先生の名前を子どもたちは聞いています。クラス分け名簿ももらっているので、手元のプリントにも名前が書かれています。その上で、また先生の名前を伝える必要があるのでしょうか。

 名前だけではありません。みなさんと会えることをとても楽しみにしていました。これも要りますか? 子どもたちは「うわあ、楽しみにしてくれていたんだ!」と思うでしょうか。さすがにここまでひねくれた子どもはいないかと思いますが、どちらかといえば「はいはい、いつものあいさつね」くらいに思われて流されていくだけなのではないでしょうか。

 外遊びについては「一緒に遊んでくれる!」という期待につながるかもしれませんが、どうせこれから1年間をともに過ごします。遊んでくれることくらい、おいおいわかります。初日の大切な時間を削ってまで、わざわざ伝える必要があるのでしょうか。

 ここで考えるべきポイントはふたつです。どうせこれから1年という時間をともに過ごすということ。その上で、初日という貴重な時間を割く必要があるのかということ。このふたつを踏まえて、考えていけたらいいなと思います。

 

2.どんなクラスにしたいか

  さっきの自己紹介とはちがい、これはかなり重要だと思います。これからこの集団がどこへ向かっていくのか。1年後、どんな成長を遂げているのか。要は「最上位目標」というやつです。なるべく子どもたちに伝わりやすく、かつ魅力的なことばであることが望ましいでしょう。

 ときどきこの目標を「仲間」とか「飛翔」とか、ぼんやりとしたことばに設定してしまうことがあるのですが、この類の目標にはほとんど意味がないと思っています。学級目標とは、何かを判断するときに常に立ち返るところです。

 今の行動は本当に「仲間」に合っていただっただろうか。これからしようとしていることは本当に「飛翔」と合っているだろうか。判断基準として設定するには、ぼんやりとしすぎていて難しいですよね。

 だからといって、具体的すぎると1年間の目標として成立しません。この塩梅が非常に難しいのが学級目標です。ちなみに筆者のクラスでは、どの学年だろうが、どのクラスだろうが、毎年同じ目標を掲げます。

 

 世界一おもしろいクラスにしよう。

 

 今の行動で本当に「世界一おもしろいクラス」に近づいたのだろうか。これからしようとしていることで本当に「世界一おもしろいクラス」に近づくのだろうか。何度も何度もここに立ち返るうちに「おもしろいってなんだろう?」「みんながおもしろいと思えるようにするためにはどうしたらいいんだろう?」という問いにつながっていきます。

 実際はこのあとに、緊張と緩和からおもしろさが生まれるということを簡単に説明し、緊張感や集中力を大切にしていこうという方針を伝えていきます。

 

3.怒る基準

 簡単に言えば、子どもたちに対する牽制球です。「悪口を言ったり、暴力をふったり、相手を傷つけるようなことをしたら先生は怒るよ」と、あらかじめ釘をさしておくというわけです。

 これも正直どうなんだろうと思っています。多少の牽制にはなるのかもしれませんが、結局はすべて、今後の先生の態度で決まるような気がします。どれだけはじめに「怒るよ」と伝えていようが、その後の生活で曖昧な態度をとり続けていたら、子どもたちも「なんだ怒らないじゃん」と思うようになるでしょう。

 反対に、はじめに何も言っていなかったとしても、その後の生活で、堂々と一貫した指導していれば、子どもたちも「この先生はここまでだ」という線引きをするようになるでしょう。はじめに何を言おうが結局はその後の態度次第だというわけです。

 うちのクラスでは、先ほどの学級目標もふまえて、初日にふたつのことを約束します。ひとつは、クラスをおもしろくしようと努力している人の邪魔をしないこと。もうひとつは、だれかと衝突したときに昔の話を掘り返さないことです。

 トラブルが複雑化するいちばん大きな原因が「昔のことを掘り返す」だと思っています。夫婦喧嘩なんてまさにそうではないでしょうか。あのときお前だってあんなことしてきたじゃないか!というやつです。これを言い始めるとキリがありません。だからこそ、初日に必ず確認します。

 

 今クラス全員の顔を見て、解決できていないことがある相手はいる?

 

  初日ということもあり、ここで手を挙げる子どもはまあいません。「挙げさせない」と言った方が正しいのかもしれませんね。この儀式を行うことで、全員のスタート地点をそろえます。リセットです。ゼロにするのです。

 この先になにか困ったことがあれば、必ずその日のうちに解決すること。「まあ、いいか」と思って流したのなら、それはもう絶対に掘り返さないこと。これらを初日に共通理解しておきます。これがもし1年の途中だったとしたら、あまり意味がありません。初日であることが大切なのです。

 

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 これがインク学級の学級開きの流れです。本当はそれぞれにもっと細かいねらいやポイントがあるのですが、だれに読まれているかわからないので、ここまでにしておきます。「学級開き」というテーマで「教育を存分に語れるバー」を開いておもしろいかもしれませんね。ぜひ他の先生方の学級開きや学級目標についても聞いてみたいなと思います。

taishiowawa.hatenablog.com

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 黄金の3日間についてはいろいろと言われていますが、だからこそおもしろいなと思います。それぞれに考え方も違えば、気合いの入れ方も違います。それでいい。むしろそれがいい。子どもたちは、いろいろな大人と出会いながら成長していけばいいのです。

 だから、本文では「要らない」だなんて言いましたが、自己紹介でがっちりと子どもたちの心をつかんだってかまいません。本当に楽しみにしていたのなら、その感情をすべてこめて「みんなと会えることを楽しみにしていました!」と伝えてもかまいません。あなたに合ったやり方で、すてきな学級をつくってください。こんなご時世ですが、新しい1年、ともにがんばっていきましょう。