ツイートの3行目

小学校の先生です。ツイートは2行まで。3行目からをここに書いていきます。

【水】子どもに任せる≠大人は手を出さない

 

 おはようございます。手がかじかんで鉛筆が持てなくなるあの冬は一体どこへいってしまったのでしょう。吐く息はギリギリ白くなりますが、マフラーや手袋がなくても何とかやっていけます。朝からストーブの前に張り付くこともありませんし、お風呂上がりに凍えることもありません。どうやら去年までの冬とは違うらしい。一体どうしたのでしょうか。風邪でもこじらせたのでしょうか。もしかすると、風邪で寝込む師匠の代わりに弟子の冬がやってきているのかもしれません。一生懸命がんばってはいるものの、要領がつかめずに気温を下げきれていないのかもしれません。それなら、仕方がありませんね。今年は大目に見てあげましょう。どうも、インクです。

 

子どもに任せる≠大人は手を出さない

 「自主性を育むために子どもたちに任せること」と「大人が手を出さずにほったらかしにすること」は違います。若手の先生はよくここを勘違いしてしまうので注意が必要です。自主性を育てているつもりになって、ほったらかしにしてしまうと、自分たちにとって都合のいいルールをつくり、易きに流れる集団になってしまいます。そうなってから締め直すのはとても大変なので、春のうちから厳しさをもって指導しておくことが大切です。特に学級びらきにおけるはじめの3日間はとても大切です。だからこそ教育業界では、この期間を「黄金の3日間」と呼ぶのです。

 というようなことが、初任者をターゲットにしたそれっぽい教育書にたくさん書かれています。本屋の教育書コーナーに行って学級経営に関する適当な本をとってみれば、3冊に1冊くらいはこのようなことが書かれているのではないでしょうか。なぜこんなにもこの話がよく語られるのかというと、ベテランの先生が若手の先生に対して自慢したいからです。「自分は何もしていないのに子どもたちが自ら動く」だなんて言えば、格好がつきますからね。「手のひらの上で子どもたちを転がして上手に操っているんだ!すごいだろ!」というわけです。経験のない初任者に向かってなら自慢げに語ることができますからね。

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 実際のところ「子どもたちに任せる」とはどういうことかというと、子どもたちがまるで「自分たちの力だけで成し遂げた」かのように思わせるということです。そのために、大人は徹底的にサポートします。絶対に成功するようにあらゆる箇所にネットを張っていくのです。キャッチャー・イン・ザ・ライです。

 このようなある意味約束された成功を通して、子どもたちは自信をつけていきます。「こうすればうまくいく」という経験を通して、次へ次へと繋げていきます。もしここで、大人が本当に手を出さずにほったらかしにしてしまうと、きっととても中途半端なものができあがります。するとどうなるのかというと、できあがったものの何がよくて何がだめだったのかがわからなくなってしまうのです。

 要するに次に残るものが何もない状態です。だから、次も同じことを繰り返します。同じことを繰り返すうちに、易きに流れ、「これくらいでいいや」が蔓延することになるのです。これを防ぐためにも、はじめは大人が徹底的に仕込んで成功させてやることが大切です。自転車の練習と同じですね。支えて、支えて、支えて、軌道に乗ったらパッと手を離す。すると、子どもたちは自身の力だけで進んでいくようになるのです。

 もし仮にそこで転んだとしても、過去に成功体験をもっているので比較することができます。比較することができるとどうなるかというと、何がよくて何がだめだったのかが判断できるようになります。これらを判断することができて、はじめて自分で準備や練習をすることができるようになるのです。

 要するに大人は、徹底的に仕掛けて、この準備や練習のやり方を教えなければなりません。そのためには、先ほども述べたように、比較対象としての成功体験が必要です。まずは間違いのない成功を体験させる。そして少しずつ大人の手を離していく。そこで失敗してもかまいません。なんなら失敗した方がいいのかもしれません。場合によっては、これまでのサポートとは反対に、大人が障壁を用意してやってもいいのかもしれません。失敗を通して、原因をさぐり、改善して、本当の意味での「自分たちの力だけで掴み取った成功」を目指して進んで行きます。

 ここまでくれば大人に残された役割は、ほとんどありません。子どもたちが悪戦苦闘する姿をニヤニヤしながら見守り、成功したときにはめちゃくちゃ褒める。それだけです。だからこそ、学級びらきおけるはじめの3日間はとても大切です。教育業界では、この期間を「黄金の3日間」と呼びます。知らなかったでしょ。

taishiowawa.hatenablog.com

 

 

  このように大人には相反するふたつの役割があります。「徹底的にサポートして成功させてやること」と、自走しはじめた子どもたちに「ほどよい障壁を用意してやること」です。多くの大人たちはここの切り替えがものすごく下手です。本文中では、サポートをせずにほったらかしにしてしまうことを例として取り上げましたが、逆に、いつまでもサポートし続けてしまうパターンも考えられるでしょう。それでは、自分の力だけでは走ることができない子どもになってしまいます。後者の「ほどよい障壁を用意してやること」も非常に重要な要素です。子どもたちはすごいですよ。大人の予想のはるか上をいきますからね。