おはようございます。最近、服を買わなくても生きていけることに気が付きました。正確に言えば、お金がなさすぎて買えなかっただけなのですが。ただ、そのせいもあって、ほしい服がたまっています。圧倒的に秋冬のトップスが不足しているのです。ちょっとくらいなら買ってもいいよね。ちょっとくらいなら。どうも、インクです。
「笑うしかない」ってすごい言葉だよね
「笑うしかない」ってすごい言葉だよね
— INK@小学校の先生 (@firesign_ink) October 13, 2019
「笑顔」と聞くとなんだか幸せなイメージがありますよね。嬉しかったり、楽しかったり、おもしろかったりしたときに人は笑うのでしょう。しかし、一口に「笑う」と言っても、たくさんの種類があります。思いつく限り挙げてみましょう。
大笑い 爆笑 大爆笑 腹を抱える
高笑い 引き笑い 吹き出す
微笑 照れ笑い 談笑
苦笑い 愛想笑い 作り笑い
嘲笑 薄笑い 冷笑 せせら笑い 失笑
ほくそ笑む
今の語彙力ではこのくらいが限界ですが、探せばいくらでもあるのではないでしょうか。笑いの「度合い」で使い分けられるものもあれば、「他の感情 × 笑い」として使われることばもあります。余談ですが、先日子どもに「先生の笑い方は苦笑いに近いな」と言われました。
次は、具体的な文学作品の中で、笑いがどのように表現されているかを見てみましょう。たとえば、源氏物語の「未摘花」では次のような表現が用いられています。
ただ、「むむ」と打ち笑ひて、いと口重げなるも
この笑いは、なかなか心を開いて打ち解けてくれない姫君に対して、源氏の君が「朝日が射している軒のつららは溶けたのに、どうしてその氷は溶けないで固まったままなのでしょうか」と言ったときの姫君の反応です。ことばにはしないけれど、反応は返す。困っているようで、同時に余裕のようなものも感じられる。かなり複雑なその場の空気感やふたりの思いの違いが表されている、そんな「笑い」です。
当たり前ですが、他にも「笑い」を表現している作品はたくさんあります。作者の好みや、描きたい「笑い」の種類によって、言い回しがまったく異なるのでおもしろいですね。
古賀はにやりにやり笑って僕のすることを見ていたが/森鴎外『ヰタセクスアリス』
顔を視合わせるとも無く視合わしお勢はくすくすと吹き出したが/二葉亭四迷『浮雲』
その頃の、家族たちと一緒に写した写真などを見ると、他の者たちは皆まじめな顔をしているのに、自分ひとり、必ず奇妙に顔をゆがめて笑っているのです。/太宰治『人間失格』
このように見ていると、やはり「笑い」は、嬉しさやおもしろさだけを表した動作ではないことが分かります。
と、こんなことを少し調べてみようと思ったきっかけは、最近観た『JOKER』という映画でした。ホアキン・フェニックス演じるジョーカーは、笑うべきところではない場面で笑ってしまうという精神疾患を抱えている設定です。その笑い方が、おもしろがっているような、泣いているような、苦しんでいるような、不思議な笑い方だったのです。
この「笑うべきところではない場面で笑ってしまう」という現象は、寺田寅彦の随筆『笑い』の中でも描かれています。
私は子どもの時分から、医者の診察を受けている場合にきっと笑いたくなるという妙な癖がある。この癖は大きくなってもなかなか治らなくて、今でもその痕跡だけはまだ残っている。
自分にもそのような癖があるわけではありませんが、なんとなく分かりますよね。葬儀の場など、「絶対に笑ってはいけない」と思えば思うほど笑いたくなってしまいます。ある意味「ガキ使」の仕掛ける笑いと近しいものがあるのかもしれません。
そんな多種多様な「笑い」の中でも、「笑うしかない」ってすごいことばだなと思います。選択肢を失い、なす術がなくなったときに、人は笑うのです。どん底まで沈んで、どうしようもなくなったときに、人は笑うのです。最後の最後に人は笑うのです。
改めて、「笑う」ってどのような感情表現なのでしょうか。逆に言えば、どうしてこんなに「幸せ!」「ハッピー!」というイメージが定着しているのでしょうか。小さい頃から「笑顔はすてきなものだ」「笑う角には福来たる」「みんな笑えばみんなハッピー」と刷り込まれてきましたが、はたして本当にそうなのでしょうか。
久しぶりに、引用しながら文章を書いてみたのですが、なかなかまとまりのない記事になってしまいました。やはり、自分の考えをただつらつらと書くときよりも、構成を考えて書かなければなりませんね。また時間のあるときにでも再チャレンジしようと思います。
それでは、最後に読んでくださったみなさんで集合写真を撮って終わりにしましょうか。SNSに顔出しができない人は今のうちにはずれておいてくださいね。それでは撮りますよ。みなさん笑って!はい、1たす1は?
参考文献
・中里理子(2006年)「笑いを描写するオノマトペの変遷 −中古から近代にかけて−」上智教育大学研究紀要