ツイートの3行目

小学校の先生です。ツイートは2行まで。3行目からをここに書いていきます。

【月】選択肢すらロクに知らない状態で将来の夢を選択しなければならない子どもたち

 

 おはようございます。職業は手段です。目的ではありません。人の命を助けるために、医者になる。人の命を助けることが目的、医者になることが手段です。要するに、人の命を助けるという目的に重きを置くのであれば、別に医者である必要はないということです。消防士だって人の命を助けますし、カウンセラーだって人の命を助けます。作家が人の命を助けることだってあるし、ミュージシャンが人の命を助けることだってあります。

 だから「将来の夢はお医者さんです」という言い方はちょっとヘンです。言うとしたら「将来の夢は人の命を助けることです。そのためにお医者さんになります」になるはずなのです。今日はそんな「将来の夢」そして「学校のこれから」に関するお話です。ぜひ自分の未来を想像しながら読んでみてください。どうも、インクです。

 

選択肢すらロクに知らない状態で将来の夢を選択しなければならない子どもたち

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 よくあるQ&Aですね。可能性を広げるため。王道の答え方だと思います。たしかに、勉強をしなければ医者になることはできません。ある程度大きくなってから突然「医者になりたい!」と思ったとしても、すでに手遅れだなんてこともあるでしょう。いざやりたいことがみつかったときに、それができるだけの素地を整えておく。そのために勉強をする。筋は通っているかと思います。

 ここまで読んで「たぶんそろそろ逆説がくるだろうな」と思ったあなた。正解です。上の回答はたしかにそのとおりだとは思うのですが、なんの躊躇いもなくうんと頷けるかというと、そういうわけにもいきません。「来るかどうかもわからない未来のために、今は嫌でも我慢してがんばれ」と言っているのと同じですからね。子どものころは、大人になったときのためにがんばって。大人になったら、老後のためにがんばって。老人になったら、死んだときにためにがんばって。これだとずっと我慢です。我慢、我慢、我慢です。そして死にます。それでいいのでしょうか。

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 それともうひとつ。いくら「可能性を広げる」といえども、学校で扱える分野なんて所詮は知れています。それでも幅を広げようと、外国語やらプログラミングやら、いろいろと取り込もうとしていますが、簡単に言えば「無理」です。「不可能」です。学校という場所で広げることができる横幅は限られています。

 学校で「お金」の勉強はしません。「お笑い」の勉強もしないし「ヒップホップ」の勉強もしません。「釣り」の勉強もしないし「カメラ」の勉強もしません。体育があるといえども「スポーツ」にも限りがあります。小説は扱っても「戯曲」は扱いません。科学は扱っても「宗教」は扱いません。学校で扱っている分野なんて、ほんのひと握りでしかないのです。

 それにも関わらず、学校という場所に行けば、そんなひと握りの分野が「すべて」になります。どれだけ8ケタ稼いだとしても、学校では褒められません。秀逸なツッコミができたとしても、固い韻が踏めたとしても、巨大なマグロを釣り上げたとしても、学校では褒められません。理由はただひとつ。学校で扱っている分野ではないから。ただそれだけです。大人たちが勝手に決めた分野です。国語をやろう。算数をやろう。理科をやろう。社会をやろう。選ばれなかった分野では、いくら優れた能力を発揮したとしても評価されないのです。

 だからといって、学校で「お笑い」も「ヒップホップ」も「釣り」も取り扱えるのかといったら、先ほど言ったとおり「無理」です。「不可能」です。ただでさえ、てんこ盛りの状態です。これ以上、新しい分野を増やすことなんてできません。では、一体学校はどうすればよいのか。ここから導き出される結論はひとつです。

 

 学校を小さくする。

 

 くり返しになりますが今の学校は、あらゆる分野を自分たちで担おうとして、キャパオーバーになってしまっている状態です。扱える横幅には限りがあるのに、まだ増やそうとしています。しかも、横幅を広げすぎたせいで、それぞれの分野の縦幅も確保できなくなってきています。限られた枠の中に詰め込みすぎたのです。時間という枠は、リスの頬のようにはいきません。何かを増やすのなら、何かを減らさなければならないのです。

 だから、学校を小さくする。可能な限り小さくする。学校に残された唯一の道です。ただでさえ社会は多様化しています。それらをカバーしきることなんて絶対にできっこありません。学校では本当に最低限のことだけを学ぶ。あとはご自由に!このように変化していくしかないような気がします。

 もうおわかりだとは思いますが、そうなると「家庭」と「地域」の役割が大きくなってきます。お昼には学校から帰ってくる子どもたちに、午後からは広い世界を見せてやらなければなりません。そうなると家庭格差や地域格差が問題になってくるでしょう。あの子の家ではパソコンを買ってもらえるけれど、うちでは買ってもらえない。あのまちではスキーができるのに、このまちではできない。そこをどのように解消していくのか。これもまた「家庭」や「地域」の課題になってきます。

 しかし残念ながら、今の「学校」「家庭」「地域」には、きっとこれができません。ここまで話してきたことはただの理想論であり、実現することはないでしょう。変化する力が不足しているうんぬんの問題ではありません。気づくのが遅すぎたのです。学校はもうとっくの昔に溢れかえっています。それが分かっていても変えることができなかったのです。今更あわてて「働き方改革」を叫んでいますが、もう手遅れです。遅すぎます。その改革も、本気で変えようとしているのならまだしも、生半可な気持ちがそのまま表れてしまっています。そんな現状を打開する方法はひとつ。

 

 一度、崩壊させる。

 

 こうするしかないような気がします。溢れかえっている箱の中に、ひたすらモノを詰め込んで、箱そのものを壊してしまう。中身をぜんぶ出すのです。きっと混乱が起こるでしょう。大変なことになるでしょう。でもね、きっとここまで行かないと変わることはありません。なんならとっくにその崩壊は始まっています。自発的に変わることができなかったのなら、変わらざるをえない状況下に置かれるしかありません。むしろ、どうせいずれはここにたどり着くことになります。「崩壊」だなんて言うと随分と悲観的に聞こえるかもしれませんが、その先に希望を抱くことはできるはずです。一度空っぽになれば、あとは好きなものを詰めていけばいいのです。スクラップ&ビルド。現場で戦い続けるというのなら、覚悟しておいた方がいいのかもしれません。

taishiowawa.hatenablog.com

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 今日の記事は、土曜日に行ったZOOM会議で話したことや話して思ったことをまとめたものです。教育を存分に語れるバー。第1回 これからの学校の在り方。なかなかにおもしろかったです。参加しようか躊躇ってしまった方、ZOOMがよくわからなくて参加できなかった方、貴重なチャンスを逃していますよ。第2回の日程は決まっていませんが、テーマだけ先に決めました。次は参加できるように準備しておいてね。

 

第1回 これからの学校の在り方

20020年3月28日(土)【済】

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第2回 よい職員室とわるい職員室

日程未定(4月中には開催します)

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