おはようございます。雨がぽつぽつ降っています。部屋にいるときから降っていることがわかっているのに、とりあえず一旦は傘を持たずに外へ出てみます。すると、案の定雨が降っているので、傘を取りに玄関まで戻ります。頭ではわかっているにも関わらず、どうしても確かめたくなってしまうのです。
歩いている途中で雨が降ってきたときは、傘をさすかささないかのせめぎ合いが始まります。折り畳み傘は、一度さしてしまうと濡れるので、カバンの中に入れることができなくなってしまいます。だからといってささないまま我慢していると雨足がどんどんと強まってきます。目的地までの距離を計算しながらさすかささないかの判断をくだすのです。大抵、さしたら雨足が弱まります。なかなか思い通りにはいかないものです。どうも、インクです。
ちょっとそこまで
ちょっとそこまで
— インク@小学校の先生 (@firesign_ink) 2020年3月2日
人に自慢できることがひとつだけあります。それは、ジブリ映画の『となりのトトロ』を1回も観ていないということです。本当です。1回も観たことがありません。テレビで何度もくり返される再放送の網もすべて全部くぐりぬけてきました。きっと読んでくださっている方のほとんどはもう観てしまっていることでしょう。そんなみなさんは、もう二度と「観たことがない」という状態に戻ることはできません。どうですか。うらやましいでしょ。
今日は、そんな『となりのトトロ』を1回も観たことがない筆者が、アニメ映画のすてきなワンシーンをご紹介していきたいと思います。映画そのものをご紹介するわけではありません。その映画に出てくるワンシーンだけを紹介します。決してその映画が好きなわけではありません。そのシーンが好きなのです。そのつもりで読んでいただけると幸いです。
1.ちょっとそこまで
みんな大すき『となりのトトロ』(1988)のワンシーンです。 この記事のタイトルを見ただけでトトロだと気づいていた方も多いのではないでしょうか。メイがお弁当を下げて広い庭へとくり出すあの場面です。これから物語が動きだすあのワクワク感がたまりません。何よりもお父さんとメイとの会話が絶妙なんですよね。好きすぎて、何も見なくてもセリフが思い浮かんできます。
このメイちゃんのすこしませたかんじがいいんですよね。またこのあとにつづく「お父さん、お弁当まだ?」や「お父さん、お花屋さんね」のあのやりとりもいいんですよ。お父さんにかまってほしいけれど、決してわがままは言わないあのかんじ。お父さんもお父さんで、決してめんどくさがる素振りは見せずに、ほどよくリアクションを返してあげるあのかんじ。決して深い意味はないけれど、絶妙な会話が繰り広げられていきます。伝わっているでしょうか。今日はずっとこの調子で進みますよ。ついてきてくださいね。
2.今は、これが精一杯
宮崎駿つづきです。ふたつ目は言わずもがな知れた『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)の名シーンをご紹介します。世界に名を轟かせる大泥棒が、必死にひとりの女の子のもとにたどり着いて、手品を見せながらこう言うわけです。今は、これが精一杯。最高にカッコつけたセリフでありながら、まったく背伸びをしていません。等身大の自分自身を正直に見せています。その姿がまあカッコいいんですよね。そりゃあ心も盗まれますわ。
「ああ、なんということだ。その女の子は悪い魔法使いの力を信じるのに、泥棒の力を信じようとしなかった。その娘が信じてくれたなら、泥棒は空を飛ぶことだって湖の水を飲み干すことだってできるのに」もなかなかの名ゼリフですが、やっぱり「今は、これが精一杯」を超えることはできません。「湖の水を飲み干す」という比喩がいいかんじに効いているんですね。おっと、これを比喩だと言ってしまうこと自体が野暮なのかもしれません。
3.ときどきりくつにあわないことするのが人間なのよ
このセリフと画像を見てどの作品かがわかる人は、かなりドラえもんの映画を観ている方なのでしょう。このセリフは『ドラえもん のび太と鉄人兵団』(1986)に登場します。子どものころにVHSをツタヤでレンタルして観ました。はじめに観たときから、このセリフがずっと頭に残っています。上の画像はリメイク版の新しいやつ(2011)ですね。
観たことがない方もお察しかと思います。はじめに話している女の子リルルはロボットです。人類への攻撃を企むロボット軍の一員です。そんなリルルをしずかちゃんが助けたときに、上のような会話がくり広げられます。もうここまでくると、しずかちゃんの年齢詐称を疑うしかありません。本当に小学生なのか?
4.うん、よい
最後ばかりはセリフではありません。登場人物の一連の所作が魅力的な場面です。山崎貴監督によって実写化もされた『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(2002)のワンシーンですね。
右端に映っている春日簾こと蓮姫は戦国時代の人物です。そこに野原一家が車ごとタイムスリップしてやってきます。正確に言えば、しんちゃんだけが先に戦国時代に来ており、それを追いかけて家族がやってくるという流れです。
ここで簾姫が人生ではじめて車に乗るのですが、このシーンがとてもいいのです。結構いろいろな人に話しているのですがなかなかわかってもらえません。先ほど言ったように所作の美しさがメインなので、文章では伝わりづらいかもしれませんが、一生懸命説明するので聞いてください。
大切なポイントはふたつです。ひとつは、簾姫が車に乗りこむときにはきものを脱ぐところ。憎いことに、このときカメラが足元をアップで切り取ります。これはもう確信犯ですよね。もうひとつは、同じく簾姫が後部座席で正座をするところ。乗り込んで正座するまでの一連の所作が本当に美しいのです。
それぞれのセリフも短く区切られています。作成者のフェティシズムが最大限に発揮されたシーンだと思っています。何度も言うように、このシーンは映像で観なければ伝わらないと思いますので、まだ観たことがない方はぜひ観てみてください。
「アニメには偶然がおこらない」とはよく言ったもので、本当になんでもないようなシーンが、ひときわ輝く瞬間があります。今日ご紹介した4つのシーンは、ストーリー展開に大きく関わるものではありません。それでも人の心を動かし、こうしてひとりの人間に文章を書かせています。
本当はもっと正確に説明したかったのですが、やはり映像を言語化するのは難しいものです。今は、これが精一杯です。もしかすると伝わりづらかったかもしれませんが、それはそれで映像を観るきっかけになってくれたらなと思います。個人的な趣味に最後までお付き合いいただきありがとうございました。明日もよろしくお願いします。