ツイートの3行目

小学校の先生です。ツイートは2行まで。3行目からをここに書いていきます。

【水】いたずらは想像力を育む

 

 おはようございます。花粉症ではないのですが、昨日はやけに「くしゃみ」が出る1日でした。くしゃみにはいろいろな迷信があります。「誰かが自分の噂話をしている」だとか「幸せが逃げる」だとか。「誤字に気がつかないままツイートをしてしまう」だとか「目上の人に間違えて変なラインを送ってしまう」だとか。基本的にはあまりよくないことばかりです。だからこそ、英語圏に住む人たちは「はやく治してね」という意味を込めて、くしゃみをしている人にお金をプレゼントするそうです。調べてみると、相場は10ドルほどだと書いてありました。

 しかし、この文化を逆手にとった「ハクション詐欺」が大流行したこともあったようです。どのような手法をとる詐欺なのかは、これまでの話を踏まえれば簡単に想像することができますね。詐欺師たちは一生懸命リアルなくしゃみを追求したそうです。みなさんも、体調にはくれぐれもお気をつけくださいね。どうも、イン ...... イン ..... ハックショーン。ハクション。ハクション。ハックショーン。...... いやあ、4回もくしゃみが出てしまいました。ちなみに、先ほど書いた相場の10ドルは「1回のくしゃみにつき」だそうです。どうも、インクです。ハックション。

 

いたずらは想像力を育む

  子どもたちに対してよくいたずらをします。この前は「教室に本を忘れた!」と取りに戻った子どもがいたので、図書室にのこっている全員に「隠れろ!」という指示を出しました。みんなで本棚のかげや机の下に隠れて、電気も忘れずに消しました。もちろん荷物も隠します。やるからには徹底的に。

 やっぱりいたずらは、あの待ち時間がたまりません。隠れながらニヤニヤしている子どもたちの顔。いつ帰ってくるのかとそわそわしているあのかんじ。最高です。待ちきれない子どもが、思わず「まだかな」と声を出します。するとのこりの全員が「しーっ!」と指を立てます。いや、もう、最高かよ。

 いよいよ「図書の授業なのに本を教室に忘れた子」の足音が近づいてきました。実はもうこの時点でちょっとおもしろいんですけどね。全員が必死に静寂をたもっています。ガラガラッと図書室の扉をあける音。入り口の方から「えっ?」という声が聞こえてきます。もうこの時点で、こらえきれなくなった子どもたちはクスクスクスクス笑っています。電気をつけて「もう!びっくりした!」と満面の笑みで言うその子。そこに満面の笑みで登場する隠れていた子どもたち。このときの、緊張がふっと緩むあのかんじもとてもいいですよね。だからいたずらはやめられません。

 

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 ほかにも、子どもがよく通る教室の出入り口にわざと立ちふさがってみたり。プリントを受け取ろうと手を伸ばしてきた瞬間にサッと引っこめてみたり。「どっちがいい?」と尋ねて選ばなかった方をあえてわたしてみたり。「今から計算テストをするよ」と言って全員分のプリントをひとりの机の上に置いてみたり。毎日こんなことばかりしています。

 

 余計なことをするな。

 

 どこからか、大人の声が聞こえてきます。余計なことをするな。そのことばこそが、余計なお世話です。大人たちがなぜこう言うのかというと、いたずらは往々にしてトラブルの原因になるからです。たとえば、先ほど例に挙げた「教室の出入り口に立ちふさがる」といういたずらについて考えてみましょう。

 これはいわゆる「とおせんぼ」というやつです。通ろうと思っている人からすれば、ただの邪魔です。邪魔でしかありません。この「とおせんぼ」からはじまるトラブルは、主に以下のような流れです。

 

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 いやあ、最高にめんどくさいですね。すぐに通してあげればいいものを。相手を挑発するような態度をとるせいで、ものごとをややこしくしてしまっています。女の子も女の子で、そんなに一生懸命相手をせずに、もうひとつの出入り口を通ればいいのに。挑発されたことで意固地になって、どうしてもその出入り口のことしか考えられなくなってしまっています。

 ポケモンの世界なら「いあいぎり」でおしまいなんですけどね。なかなかそういうわけにもいきません。女の子は男の子に怒る。男の子は怒られたことに反発して怒り返す。そしてケンガが始まる。当事者たちは嫌な気もちに。まわりの人も嫌な気もちに。先生も嫌な気もちに。誰にもいいことがありません。だから大人は「余計なことをするな」と言って、いたずらを抹消しようとするのです。めんどくさいことはマジ勘弁というわけです。

 

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 当たり前と言えば当たり前ですが、筆者が子どもたちに対して「とおせんぼ」をしたとしてもこんなことにはなりません。どうしてだと思いますか。そうです。筆者が「分別のついた大人」だからです。これが今日の結論です。わかりますか。

 要するに、とおせんぼという「いたずらそのものが悪いわけではない」ということです。ケンカになってしまうのは、相手との関係性がわからないままにいたずらをしてしまうことが原因です。関係性を踏まえた上でのいたずらは、いわゆる「じゃれあい」であり「スキンシップ」です。実際のところ、教室の扉の前に立ちふさがっていると、腕の間や足の間をくぐり抜けてなんとか通ろうとしてきます。子どもたちのようすを見ながら、ときには阻止してみたり、ときにはすんなりと通してあげてみたり。ときには「じゃんけんに勝ったら通してあげよう」と条件を提示してみたり。それぞれの子どもに合わせてコミュニケーションの取り方を変えています。

 つまり、これさえできれば「いたずら」はコミュニケーションの手段としてとて十分に成立するというわけです。むしろいい手段だと思います。はじめに紹介したようないたずらならば、ふだんは体験できないようなスリルを味わうことができますし、一体感も生まれます。短い時間で身を隠したり荷物を隠したりしなければならないので頭もつかわなければなりません。

 

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 扉に黒板消しをはさむ。典型的ないたずらですね。実はこのいたずらも、王道たる所以をしっかりと持ち合わせています。やったことがある人ならわかると思うのですが、微調整が意外と大変です。はさみ方が少しちがうだけで落ち方も変わります。また、何よりも安全が大切ですのでフワフワな方を下に向けなければなりません。クリーナーにかけたばかりの黒板消しではなく、つかったあとの黒板消しでないと、いざ成功したときのボワッという白い煙の演出がキレイにきまらなくなってしまいます。だからといって、粉まみれの黒板消しをつかってしまうと相手が怒ってしまうかもしれません。ちょうどよい絶妙な分量を調整しなければならないのです。

 どうですか。ものすごく頭をつかうでしょ。「成功したときの姿をより鮮明に想像しながら、失敗に繋がる原因を順番に排除していく」という下準備がかなり重要になってきます。そこには間違いなく期待感があり緊張感があります。

 また、先ほども述べたように相手との関係性がとても大切になってきます。どれだけおもしろくても、相手が怒ってしまったら台無しです。冗談が通じる人もいれば通じない人もいます。終わったときに、お互いが笑顔で終われるかどうか。そんな想像力がとても大切になってきます。だからこそ、子どもたちにはこんなふうに伝えています。

 

 みんなが笑顔になれるいたずらならしてもいいよ。

 

 やってみた結果として、失敗したってかまいません。今のはやりすぎだったのか。あの人はここまでやったら怒るのか。失敗からすこしずつ学んでいけばいいのです。いたずらを考えるということは、相手との関係性を見つめ直すということです。いたずらを考えるということは、自分と相手との距離をはかるということです。いたずらを考えるということは、お互いに笑顔になれる道を追求するということです。世の子どもたちよ、まずはいたずらからはじめよ。

 

taishiowawa.hatenablog.com


 最後まで読んでくださり、ありがとうござました。ここでひとつ相談があります。そろそろ次の方がリンクをタップして、あなたと同じようにこの記事を読みにきてくださるころだと思います。ふたりで協力して、ワッと驚かせてやりませんか? 途中で止まったり、ページを閉じてしまったりしないように、なんとかここまでつれてきますので、あなたはここに隠れて待っておいてください。いいですか。絶対に物音を立ててはいけません。くしゃみが出そうになってもなんとか我慢してくださいね。

 ただ、タイミングがわかりずらいと思うので、なにか合言葉を決めておきましょうか。そうですね。よし。今日の記事の中に出てくる「いあいぎり」ということばを、普段よりもすこし大きめの声で言おうと思います。「いあいぎり」ということばが聞こえてきたら、そろそろ近づいてきているという意味ですので、心の準備をはじめておいてください。いいですか。では、いきますね。次にやってくる人がびっくりする顔が目に浮かびます。絶対に成功させましょうね。